INTERVIEW06.
昼夜を問わず
航海と荷役の
安全を守り抜く
H.N
2013年入社 高専 商船学科 卒
生まれ育った瀬戸内海の島には造船所があり、幼い頃から海と船は身近な存在で、進学したのは高専の商船学科。将来は船長になりたいと、航海士を目指すコースに進む。原油船やLPG船など大型船舶を所有し、海上輸送を手がけているENEOSオーシャンに魅力を感じて入社。
INTERVIEW06.
H.N
2013年入社 高専 商船学科 卒
生まれ育った瀬戸内海の島には造船所があり、幼い頃から海と船は身近な存在で、進学したのは高専の商船学科。将来は船長になりたいと、航海士を目指すコースに進む。原油船やLPG船など大型船舶を所有し、海上輸送を手がけているENEOSオーシャンに魅力を感じて入社。
入社して最初に乗ったのは、「かいもん丸」と呼ばれる内航船のタンカーです。次席三等航海士として乗船し、三等航海士の先輩のもとで、航海や荷役の当直業務、救命設備の整備などを担当。航海士としてのイロハを学びました。航海士は、船長を助け、甲板部員を指揮しながら安全で効率的な航海と荷役に努めるのがミッション。初めての航海で、先輩や上司の颯爽と働く姿を目の当たりにして、いかに高い意識と技術力を持ったプロフェッショナル集団であるかを知りました。
もう一つ忘れられないのが、極寒のなかでの作業です。原油を積んで室蘭※に向かっていたのですが、冬の真っただ中で海がしけ、船体が真っ白に凍り付いてしまったのです。幸いにも船は進むことができたのですが、着氷をそのまま放置しておくと、船体に負荷がかかり、転覆する危険性も。それゆえ、氷を割っては海に捨てる作業を延々と続けることに。つくづく船乗りは自然が相手の仕事なのだと痛感しました。
※かつて運航していた航路
これまでに外航船と内航船を合わせて14隻の船に乗船しました。航海中は、24時間、甲板部員とともに交代で当直を行うのが航海士の任務。現在、私は二等航海士として、深夜0時から早朝4時までの時間帯と、昼12時から16時までの時間帯を担当。見張りや操船などの業務のほか、航海計画の作成や航海計器の保守・点検を行います。加えて、出入港時には船尾での係留作業を指揮します。
船を動かす上で大切なのは、見張りです。船をぶつけない、相手に危険な思いをさせない、自らも危ない思いをしない。これが基本です。だからこそ、周囲に他の船や魚群がいないか、天候が悪化しないか、双眼鏡で確認するだけでなく、操舵室から外に出て五感で確かめます。「富士山が綺麗に見えると風が強い」、「ツバメが低く飛ぶと雨になりやすい」など自然現象にも注意を払います。また、原油タンクの圧力の数値に異常がないかもチェック。そうやって無事に当直の任務を終え、次直に引き継いだ時は安堵の思いと充実感で満たされます。
23:45~0:00
ブリッジに上がり、それまで当直の三等航海士から引き継ぐ。見張りで気になったことなどを聞いておく。 ※操舵室のあるブリッジ(船橋)に上がること。
4:00~4:15
船員はみな就寝中で、機関室も17時以降は無人のため、船内は静か。不審な点はないか、隅々まで確認。
12:00~16:00
操舵手とともに当直に当たる。船長が決めたコースの航海計画を作成。それに則って、操舵手が操縦する。
16:00~17:00
当直を終えてホッと一息をつく貴重な時間。シャワーを浴びて、一日の疲れを洗い流し、夕食に備える。
自室で本を読んだり、音楽を聴いたり。横になって寝ることも多いですね。二等航海士は深夜の当直があるので、なるべく体を休めておきたくて。航海中は生活リズムが変わりますが、すぐに慣れます(笑)。
いつも持参するのは、音楽プレーヤーとイヤフォンです。当直中は特に気が張っているので、合間の時間は心身ともにリラックスすることを心がけています。ジャンルを問わず聴きますが、最近はJ-POPが多いですね。
2年前に結婚したので、妻と出かけたり、趣味の釣りをしたり。時間がたっぷりあるので旅行することが多いですね。この前は同級生と二人で日本海まで行き、イカ釣りを楽しんできました。
当直がある上、乗船期間も長いので、厳しい労働環境のように思えますが、自由時間が確保され、休暇もしっかり取れるので意外に働きやすいです。長期旅行の計画をたてやすいのもうれしいところ。
一言で言えば、「日本のエネルギー輸送を担うプライド」でしょうか。人の暮らしを支え、社会に役立っているのだとプライドを持って働けることが魅力であり、仕事のやりがいにつながっています。
原油の国内輸送を担う内航船では、1隻あたりの船員は18名。外航船でも23名と少人数です。船という限られた空間で数カ月間、一緒に暮らしていると、だんだん気心が知れて家族に近い関係になります。航海ごとに乗組員は変わりますが、中にはたびたびご一緒する方もいて、久しぶりの再会に喜ぶことも多いです。
船を見て育ち、船が好きだった私が船乗りを目指したのは当然の流れだったのかもしれません。念願の海運会社に入り、航海士としてキャリアをスタートさせました。安全運航を第一に、決められた日時までにトラブルなく貨物を送り届けるのが、私たちの使命。自然を相手に大変なこともありますが、水平線から昇る朝日や満点の星空を眺めることができるのは、この仕事ならではの醍醐味。陸上では得られない貴重な経験です。
船員という仕事に誇りを持っている私ですが、4年前、初めての陸上勤務を経験。鹿児島の喜入でターミナルオフィサーを2年間務めました。船から陸上に視点が変わったことで、船と陸上が一体となってこそ安全な海上輸送ができるのだと実感しました。
就活中は悩みが尽きないと思います。もし、船員を目指しているならば、「船乗りになりたい」という真っ直ぐな気持ちを忘れずにいてほしい。その気持ちを大事にしていれば、きっと納得のいく会社に巡り合えると思います。